聖書箇所 使徒言行録24:10~21

◇使徒パウロは3回の伝道旅行を通して、現在のトルコからエーゲ海を渡ってギリシアにかけて、広範囲にキリストの福音を宣べ伝えた。そしてさらに先へ進もうとしている。その目的地は世界の都ローマ。しかし実は彼の最終目的はさらに遥か西のイスパニヤにあった。

◇だが彼はまず困窮するエルサレム教会に、各地の信者たちから集めた義援金を届けに行く。ユダヤ人の妨害が予想されたが、案の定、パウロはエルサレム神殿の境内で逮捕され、リンチにかけられそうになった。

◇パウロはローマ帝国の市民権を持つ者だが、ユダヤ人の土地ではそれもあまり通用しない。意気消沈する彼に神の声があり、自分にローマへ行くという使命があり、さらにイスパニアへ行くという目標があることを思い出す。それは彼の計画や目標である以上に「神の計画」である。

◇パウロはローマの総督フェリクスの裁判を受ける。不当な告発を受けながらも彼は懸命に弁明する。「20:私にどんな不正を見つけたか、今言うべきです。21:彼らの中に立って、「死者の復活のことで、私は今日あなたがたの前で裁判にかけられているのだ」と叫んだだけなのです」。

◇ただの弁明を越えて、これはパウロの復活信仰の明確な表明である。キリストの十字架の死と復活によって実現した「永遠の命」を信ずるから、彼は迫害される。しかしその信仰によって勇気も得ている。

◇パウロは最終の目標だったイスパニアには到達できなかったが、彼のその願いは、数百年後に実現した。16世紀にイエズス会のフランシスコ・ザビエルが海を渡って、初めて日本にキリスト教を伝えた。豊臣秀吉の時代にはキリスト教が禁止され、1597年に長崎で26名の信徒が処刑された。のちに「26聖人の殉教」と呼ばれる。

◇その内の10代前半の少年に、長崎奉行が「キリシタンを捨てわしの小姓になれば助けてやる」と言ったが少年は、「私たちはハライソ(天国)でデウス(神)さまのお小姓になりとうございます」と言って死んだ。

◇復活と永遠の生命を信じる信仰が、こうして世界に拡がっていった。「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された。独り子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである」(ヨハネ3:16)。
                         大村 栄