聖書個所ーマルコによる福音書1:1~11 (クリスマス礼拝)
◇マルコ福音書はキリストとバプテスマのヨハネとの出会いから語り始める。ヨハネについての旧約の預言が引用される。「2:預言者イザヤの書にこう書いてある。「見よ、わたしはあなたより先に使者を遣わし、あなたの道を準備させよう。3:荒れ野で叫ぶ者の声がする。「主の道を整え、その道筋をまっすぐにせよ」」。
◇ヨハネはイザヤの預言したメシアの道を備えるために先に遣わされた「2:使者」だった。そしてついに待ちに待った主イエスがヨルダン川に登場した時、自分は引き下がる時が来たと思ったろうが、主はヨハネの前にひざまずき、彼からバプテスマを受けることを望まれた。本当に神の子にそれが必要だったのだろうか。
◇イエスは民衆と共に川岸に並んで順番を待ち、水に入ってヨハネから悔い改めのバプテスマを受けられた。すると「10:天が裂けて“霊”が鳩のように御自分に降って来るのを、御覧になった」。そして「11:あなたはわたしの愛する子、わたしの心に適う者」という神の声が聞こえた。
◇「天が裂ける」のは、主イエスのこの行動を通して天国の門が開けたことを指している。讃美歌102「もろびと声あげ喜びたたえよ。あめのとびら今しも開かれ、つきぬ恵みを身に帯び給いて、きよきみ子は生まれたもう」。天国の扉を開き、そこへ向かう道を示すために、クリスマスに来られたのがみ子イエス・キリストだった。
◇この世界には壁によって閉ざされた社会や、分断された社会があふれている。かつてのベルリンの壁や、パレスチナ人を周辺に追いやるイスラエルの高い壁。難民の流入を避けるために国境線に立てられた壁。世界各地にそのような壁が存在し、人が一致して進む道を閉ざしている。
◇罪なきみ子が、罪の赦しのバプテスマをヨハネから受けて、人と共に歩む生涯に踏み出されたことを神は、「11:あなたはわたしの愛する子」と評価し、ここに「10:天が裂け」るという事態が起こった。
◇キリストの誕生とそのご生涯は、天のとびらが開かれて、天と地を隔てる壁が取り払われて、天地がひとつとなることのしるしだった。そしてそれがクリスマスに始まった福音なのだ。 (大村 栄)